日々の泡…
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一夜明けて秋。
2009年 08月 25日 (火) 02:34 | 編集
いさぎよい非情の金属が青くさびて
地上に割れてくずれるまで
この原始林の圧力に堪えて
立つなら幾千年でも
黙って立ってろ


ーそれだ、それだ、それが世の中だ
彼等の欲する真面目とは礼服のことだ
人工を天然に加えることだ
直立不動の姿勢のことだ
彼等は自分等のこころを
世の中のどさくさまぎれになくしてしまった


かと思えば。


桜がいちめんに咲いているので
空も地面もありはしない


でもいちばんとってもいいなぁと思ったのは


そんなにもあなたはレモンを待っていた
かなしく白くあかるい死の床で
わたしの手からとったひとつのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱっとあなたの意識を正常にした

あなたの青く澄んだ目がかすかに笑う
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたののどに嵐はあるが
こういう命の瀬戸際に
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた

それからひと時
昔山顛でしたような深呼吸をひとつして
あなたの機関はそれなり止まった

写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置こう

               -『高村光太郎詩集』
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